帰国事業とは

乗船した帰国船の中で別れを惜しむ帰国者。「写真で綴る北朝鮮帰国事業の記録 帰国者九万三千余名の別れ」(高木書房)より引用。

乗船した帰国船の中で別れを惜しむ帰国者。「写真で綴る北朝鮮帰国事業の記録 帰国者九万三千余名の別れ」(高木書房)より引用。

1959年から1984年まで、25年間にわたって計93,340人の在日朝鮮人と日本人の家族(日本国籍者は6,679人)が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に「帰国」した事業。差別と貧困にあえぐ在日朝鮮人を、発展する社会主義の祖国に帰還させることを北朝鮮政府と朝鮮総連が求めて運動を展開、日本政府も同意し、日朝の赤十字社が主体となった事業として実施されました。

1960~70年代当時の在日人口の実に6.5人に1人が北朝鮮に渡る民族大移動となりました。日本社会では、自民党から社会党、共産党までの政党が賛成し、多くの政治家や、地方自治体、労働組合、マスコミ、文化人が協力、いわば、日本社会全体で93,939人の背中を押して北朝鮮に送り出したと言えます。

しかし残念なことに、帰国した在日朝鮮人が北朝鮮でどのような生を送ったのか、詳細はほとんど不明のままです。帰国者の大半は外国に出国することはおろか、日本の親族・知人と自由な意思疎通が許されなかったからです。消息が不明になった帰国者も大勢います。
(出典 『北朝鮮帰国事業関係資料集』新幹社)